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No.91
ふせ
,
らくがき
ロトあだ 現行未通過NG❌
#-ロトあだ
#-火山灰炎界
普段やらないことに挑戦してみようということで自陣小説を書いてみました。仲良く喧嘩してる話。海孝さんお借りしてます。
▼ここからネタバレ
すぐわかる自陣メモ。
エンド3の命。ト●とジェ●ーです(●ムと●ェリーではない)(?)
漆嘴海孝(うるはしうみたか):
黒八鬼組の若頭。猛禽類の様な危険な男。人間を蹴り殺すのが得意。炎界を喰い殺したい。
火山灰炎界(かざんばいえんかい):
桃樂亭の落語家。亭号は桃樂亭海炎。顔の良さを活かして二ツ目になった。海孝を自分のものにしたい。
「おあとがよろしいようで」
桃樂亭海炎は高座で落語を披露する。
今日の演目は『火事息子』。親子の人情噺で、旦那とおかみの声音の違いをありありと観客に見せつける。初々しい息子から逞しい父となり、色っぽい人妻へ。彼の最も得意とする手法だ。鳴り止まない拍手ののち、名前の書かれた見出しが代わる。桃樂亭ではお馴染みの演者交代を知らせる合図が、真打ちの出番を知らせたのだ。桃樂亭海炎は舞台袖へと消えていく。
煌びやかな高座から薄暗い暗幕の中へ。
桃樂亭海炎から火山灰炎界に戻った落語家は、控え室へ戻ろうと歩を進めるも、それは額に羽根の刺青のある白スーツの男に阻まれた。黒八鬼組の若頭、漆嘴海孝だ。海孝が獲物を狙うような視線で舞台袖で待ち構えていた。
また、いる。
彼はあの事件から炎界の落語を見に鼠花芸術文化ホールへ通っているのだ。観客として観客席で座って見れば良いものを。いつも決まって舞台袖から見るというのは、一体どういう了見なのか。
「お迎えご苦労。俺の下働きをする気分はどうだ、漆嘴海孝。」
「抜かせ。お前が俺の下だろうが炎界。」
「寄席に足繁く通う熱心なファンに言われたくねえなあ。…惚れてるって言えばいいのに。」
最後の一言をおかみの声で言ってやる。
喧嘩しか脳のない鳥頭でも、揶揄われたのだとわかるだろう。眉を寄せろ。しかめ面になれ。公演後の高揚感とないまぜに、屈服させたい支配欲が心を満たす。お前の歪んだ顔が見たい。
「負けてねえ。今日は最後まで観た。」
「なんだそりゃ。」
罵倒が飛んでくると踏んだのに、思わぬ返答で呆気に取られてしまう。細められた目にぴくりとも動かない海孝の眉根。それは何の表情だ。
「お前のその勝ち負けと、最後まで観たというのはよく分からん。俺の落語を何だと思ってる。」
「お前の武器だ。だから、見る。俺とお前の勝負だ。観客席なんかで寛いでられるか。」
「俺の武器ねえ。へぇ。鳥頭にしてはよくわかってるじゃねえか。」
これっぽっちも落語に興味はないと思っていたのに。またも浴びせられた思わぬ返答にこちらの口端がゆがむ。俺の落語を武器だと言ってきた。その右足と懐のナイフで一体何人の息の根を止めてきたのだろう。凶器のような男に半端な暴力ではへし折れないと認められるのは何ともまあ、気分がいい。
「で、だ、その。いつ、あんだ。…火消しの。」
海孝の鋭い顔がやっと俺の期待した顔になる。ばつが悪そうな顔とはこれを言うのだろう。その屈辱を抱えた表情が見たかった。
なるほど勝負か。十羅矢の「芝浜」の代替公演で披露した俺の十八番「定火消し」は完遂されずにあの騒ぎとなった。
演者が舞台袖まで控える余韻も含めて演目だ。話終わると同時に舞台が暗転したあの演目では消化不良だったのだろう。最後まで見れなかった俺の武器に対して、海孝は敗北を感じている。これは良い。
「俺の十八番が見たいと言ったらどうなんだ?んん?定火消しだろう。次の公演はいつだったかなあ。」
口には三日月。ぽっかり空いた満足の形。炎界の頬には深い笑いの皺が刻まれる。
次の『定火消し』の公演は5日後だ。もちろん己の演目は全て把握している。嘴野郎に教えてやるわけがない。
「灰野郎。てめえ、覚えてろよ。」
落語家のニンマリとした笑みに、察したであろう海孝が殺気を増す。
これからこの野蛮な男が、『定火消し』を求めて公演までホールを行き来する姿を想像するだけで面白おかしくて仕方がない。
奴が俺の十八番を心待ちにしているとは、極道者を惹きつける武器が自分にあるとわかり、愉快な気持ちになる。
海孝から離れる様にして、舞台袖を後にする。
背面から聞こえる舌打ちに黒手袋の左手で振り返らずに挨拶をしてやる。追っては来ない。
暗幕を抜け、控え室へ進む。休憩に明日の会の進行の打ち合わせ。やることはたくさんある。早々に頭の中の目障りな鳥を追い出してやろうと思案した所で、ふと気付く。何ともまあ。
奴が演劇場に来ることが、面白おかしくて、愉快な気持ちになる?
これはいけない。顔も見たくない手も早い野蛮な男。公演日だけ教えてやれば、演劇場に通わせる必要なんてない。再会を心待ちにしているのは、俺ではないか。
囚われているのはどちらだというのだ。
火山灰炎界は眉根を寄せて、心に芽生えた安堵の感情に葛藤しながら、控え室の扉をゆっくり閉めた。
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2023.12.4
No.91
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普段やらないことに挑戦してみようということで自陣小説を書いてみました。仲良く喧嘩してる話。海孝さんお借りしてます。
すぐわかる自陣メモ。
エンド3の命。ト●とジェ●ーです(●ムと●ェリーではない)(?)
漆嘴海孝(うるはしうみたか):
黒八鬼組の若頭。猛禽類の様な危険な男。人間を蹴り殺すのが得意。炎界を喰い殺したい。
火山灰炎界(かざんばいえんかい):
桃樂亭の落語家。亭号は桃樂亭海炎。顔の良さを活かして二ツ目になった。海孝を自分のものにしたい。
「おあとがよろしいようで」
桃樂亭海炎は高座で落語を披露する。
今日の演目は『火事息子』。親子の人情噺で、旦那とおかみの声音の違いをありありと観客に見せつける。初々しい息子から逞しい父となり、色っぽい人妻へ。彼の最も得意とする手法だ。鳴り止まない拍手ののち、名前の書かれた見出しが代わる。桃樂亭ではお馴染みの演者交代を知らせる合図が、真打ちの出番を知らせたのだ。桃樂亭海炎は舞台袖へと消えていく。
煌びやかな高座から薄暗い暗幕の中へ。
桃樂亭海炎から火山灰炎界に戻った落語家は、控え室へ戻ろうと歩を進めるも、それは額に羽根の刺青のある白スーツの男に阻まれた。黒八鬼組の若頭、漆嘴海孝だ。海孝が獲物を狙うような視線で舞台袖で待ち構えていた。
また、いる。
彼はあの事件から炎界の落語を見に鼠花芸術文化ホールへ通っているのだ。観客として観客席で座って見れば良いものを。いつも決まって舞台袖から見るというのは、一体どういう了見なのか。
「お迎えご苦労。俺の下働きをする気分はどうだ、漆嘴海孝。」
「抜かせ。お前が俺の下だろうが炎界。」
「寄席に足繁く通う熱心なファンに言われたくねえなあ。…惚れてるって言えばいいのに。」
最後の一言をおかみの声で言ってやる。
喧嘩しか脳のない鳥頭でも、揶揄われたのだとわかるだろう。眉を寄せろ。しかめ面になれ。公演後の高揚感とないまぜに、屈服させたい支配欲が心を満たす。お前の歪んだ顔が見たい。
「負けてねえ。今日は最後まで観た。」
「なんだそりゃ。」
罵倒が飛んでくると踏んだのに、思わぬ返答で呆気に取られてしまう。細められた目にぴくりとも動かない海孝の眉根。それは何の表情だ。
「お前のその勝ち負けと、最後まで観たというのはよく分からん。俺の落語を何だと思ってる。」
「お前の武器だ。だから、見る。俺とお前の勝負だ。観客席なんかで寛いでられるか。」
「俺の武器ねえ。へぇ。鳥頭にしてはよくわかってるじゃねえか。」
これっぽっちも落語に興味はないと思っていたのに。またも浴びせられた思わぬ返答にこちらの口端がゆがむ。俺の落語を武器だと言ってきた。その右足と懐のナイフで一体何人の息の根を止めてきたのだろう。凶器のような男に半端な暴力ではへし折れないと認められるのは何ともまあ、気分がいい。
「で、だ、その。いつ、あんだ。…火消しの。」
海孝の鋭い顔がやっと俺の期待した顔になる。ばつが悪そうな顔とはこれを言うのだろう。その屈辱を抱えた表情が見たかった。
なるほど勝負か。十羅矢の「芝浜」の代替公演で披露した俺の十八番「定火消し」は完遂されずにあの騒ぎとなった。
演者が舞台袖まで控える余韻も含めて演目だ。話終わると同時に舞台が暗転したあの演目では消化不良だったのだろう。最後まで見れなかった俺の武器に対して、海孝は敗北を感じている。これは良い。
「俺の十八番が見たいと言ったらどうなんだ?んん?定火消しだろう。次の公演はいつだったかなあ。」
口には三日月。ぽっかり空いた満足の形。炎界の頬には深い笑いの皺が刻まれる。
次の『定火消し』の公演は5日後だ。もちろん己の演目は全て把握している。嘴野郎に教えてやるわけがない。
「灰野郎。てめえ、覚えてろよ。」
落語家のニンマリとした笑みに、察したであろう海孝が殺気を増す。
これからこの野蛮な男が、『定火消し』を求めて公演までホールを行き来する姿を想像するだけで面白おかしくて仕方がない。
奴が俺の十八番を心待ちにしているとは、極道者を惹きつける武器が自分にあるとわかり、愉快な気持ちになる。
海孝から離れる様にして、舞台袖を後にする。
背面から聞こえる舌打ちに黒手袋の左手で振り返らずに挨拶をしてやる。追っては来ない。
暗幕を抜け、控え室へ進む。休憩に明日の会の進行の打ち合わせ。やることはたくさんある。早々に頭の中の目障りな鳥を追い出してやろうと思案した所で、ふと気付く。何ともまあ。
奴が演劇場に来ることが、面白おかしくて、愉快な気持ちになる?
これはいけない。顔も見たくない手も早い野蛮な男。公演日だけ教えてやれば、演劇場に通わせる必要なんてない。再会を心待ちにしているのは、俺ではないか。
囚われているのはどちらだというのだ。
火山灰炎界は眉根を寄せて、心に芽生えた安堵の感情に葛藤しながら、控え室の扉をゆっくり閉めた。
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